憲法Q&A

平和憲法編
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なぜ日本国憲法では軍隊を持たないと決めたの?

それは、戦争によって人が人を殺したり、殺されたりするのをやめるためです。

日本は、1931年から1945年までの15年間にわたって中国大陸や東南アジア、太平洋への侵略戦争を続け、2000万人ものアジアの人びとに対する加害者になり、日本中でも310万人ともいわれる多くの死傷者を出しました。

戦後生まれた日本国憲法は、戦争への深い反省を込めて、二度と戦争をしないこと、国際社会と協調して平和な世界をつくることを決意し、そのために軍隊を持たないことにしたのです。
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本当に攻めてくる国はあるの?

冷戦の終結や国連の役割の拡大、経済の急激なグローバル化を考えれば、日本が他国から攻撃を受ける可能性は極めて低いものです。

冷戦の終結や国連の役割の拡大、経済の急激なグローバル化を考えれば、日本が他国から攻撃を受ける可能性は極めて低いものです。

「ソ連の脅威」が叫ばれた頃でさえ、その侵攻の可能性は「万万万万が一」(福田首相=当時)と言われていました。有事法制の国会審議の中でも、中谷元防衛庁長官は、「(武力侵攻してくる国は)想像ができないかもしれない」(2001年5月31日)と答弁しています。  

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軍隊を持ったほうが日本を攻めようとする国への抑止力になるんじゃないの?

抑止力にはなりません。むしろ、軍拡競争を助長してしまいます。

軍隊を持って日本を攻めようとする国の抑止力にしようというのは、つまり周りの国に対して、“もし日本を攻めてみろ、ひどい目にあわせるぞ!”と脅すことです。脅かせば相手はあきらめるでしょうか?現実を見れば、軍事力を強化すれば、相手はより強い軍事力を持とうとするでしょう。結局、軍拡競争への道を開くだけです。

軍備の拡張がすすめば、国同士の緊張も高まり、かえって戦争のきっかけも増えてしまいます。

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国民を守るために軍隊は役に立つの?

軍隊は国民を守るためには役に立ちません。

「国民」を守ることと、「国家」や「軍隊」を守ることは必ずしも一緒ではありません。軍隊は、実際の戦闘では、国民の命よりも軍事的な作戦、軍隊の勝利を優先します。歴史上どこにおいても、軍隊は、敗戦が必至となると、国民を戦火の中に置き去りにして最小限の支配体制と戦闘力を温存しようとします。  

第二次世界大戦でもそうでした。日本軍は、沖縄戦で、沖縄の人々を守らず、軍隊を守るために、沖縄の人々を軍事行動の障害になるといって虐殺しました。中国東北部では、日本国民を置き去りにして真っ先に逃げたのは日本軍でした。

日本は、当時、世界でも有数の軍事力を持っていましたが、結局、軍隊によって国民の生命と財産を守ることはできませんでした。
 

まして、現代は、大量殺戮兵器が発達し、核兵器まで保有する国があります。これらの大量殺戮兵器や核兵器が使用されれば、大惨事となり、多くの国民が犠牲となることは避けれられません。軍事力によってこれらの犠牲を防ぐことができるでしょうか。  

昔も今も軍隊は国民を守るためには役に立たないのではないでしょうか。
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日本国憲法は、どうやって国を守ろうとしているの

日本国憲法は、「攻められない国」を創ることにしました。

日本国憲法は、国際的に中立の立場に立って平和外交や国際連合によって安全を保障しようとを考えています。そのために、日本が国際的な紛争・対立の解決や緩和に向けた努力をすることを求めています。

日本国憲法は、さらに戦争や内戦の原因をなくすために、日本が国際社会において積極的な役割を果たすことも求めています。戦争や内戦の原因となる飢餓、貧困、人権侵害、差別、環境破壊などをなくすために、地雷を除去したり、子どもを助けたり、病院や学校を作ったりする地道な活動を続けることを求めているのです。

日本国憲法は、そういった努力によって、日本が世界の国々から信頼され、攻められない国を創りあげることで、日本と世界の安全と平和を達成しようと考えています。

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今ある自衛隊を憲法に明記するだけなら、現実は何も変わらないのでは?

現実には大きく変わってしまいます。

日本は、第二次世界大戦後の60年間、戦争によって一人も人を殺してきませんでしたし、殺されてきませんでした。憲法9条の「戦争はしない」「戦力はもたない」という“歯止め”が強力に働いてきたからです。自衛軍を認めてしまえば、この“歯止め”を失うことになります。

多くの戦争が自衛の名目で行われてきた歴史があります。自衛軍を認めることは、自衛隊に他国の人を戦争で殺す権利を与えることにつながるのです。

9条2項に自衛隊を明記することは、9条を捨てることです。  

それだけではありません。私たちの生活も大きく変わります。

軍備の充実・拡張のために、軍事費を増やす必要が出てきます。そうなると、軍事費を生み出すために、今よりいっそう福祉・教育などの社会福祉が切り捨てられるおそれがあります。

戦争は、国民の協力なしにはできません。ですから、有事法制など国民の戦争協力体制がどんどん確立されたり、国家のために命を捨てられる国民を育てる「愛国心」教育が行われたりするようになります。

経済も福祉も法も教育も、あらゆるものが軍事と結びついたものに変わっていきます。私たちの生活、人権、民主主義にとって致命傷となりかねない変化といえるでしょう。

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最近、集団的自衛権という言葉をよく聞きますが、どんな意味ですか?

集団的自衛権とは、密接な関係にある他国が第三者による武力攻撃を受けた場合に、例え自国が攻撃を受けていなくても、その武力攻撃に対して阻止・排除をする権利のことです。

集団的自衛権は、自国が武力攻撃を受けている場合に認められる個別的自衛権とはまったく違います。

集団的自衛権は、国連がめざした集団安全保障のしくみを根底からくつがえす危険な性格をもっています。

国連がめざす集団安全保障は、国連憲章に違反する国がでた場合、加盟国が集団で違法行為を制裁することでその国に違法行為をやめさせるしくみです。これは、集団的自衛権のような考え方が世界大戦に結びついた苦い経験をふまえて考え出されたしくみです。

ところが、集団的自衛権を認めると、密接な関係を結んだ諸国は、仲間の国を攻撃する国に対して、自衛権の名で、次々と戦争をはじめることができるのです。

これでは、各国から勝手に戦争する根拠をなくし、国連全体で集団的に安全を保障しようとした国連の集団安全保障のしくみは台なしになってしまいます。

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集団的自衛権の行使は憲法で認められるの?

集団的自衛権の行使は憲法では認められていません。

集団的自衛権の行使とは、日本が軍事同盟を結んでいる相手の国(例えば、アメリカ)が戦争をする時に共同で戦争行為に参加することです。

憲法9条は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定し、武力で紛争を解決することを禁止しています。ですから、集団的自衛権の行使は憲法で認められていません。そのため政府も、集団的自衛権の行使は憲法上許されないと説明してきました。

日本が安保条約を結んでいるアメリカは、国益を守るために必要であるとアメリカが判断した場合に、一方的な軍事力行使をするということを公式の戦略にしています。その戦略のもと、アメリカは、アフガニスタンやイラクへの攻撃をはじめ、一方的な武力行使をくり返してきました。

集団的自衛権の行使は、このようなアメリカの侵略と武力干渉に日本が共同して参加するものです。集団的自衛権の行使は、国際貢献ではなく、危険な集団的な軍事介入への道でしかありません。
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国際貢献には軍事的な協力も必要なの?

世界でもっとも求められる国際貢献は、人々の生活に根ざした非軍事・文民・民生協力です。

軍事介入は、紛争を悪化させることはあっても、紛争を根本的原因から終局的に解決することはできません。むしろ軍事介入は、紛争の根本原因である政治的・経済的な構造をますます悪化させています。軍事介入によってもたらされる秩序とは、実際には恐怖と暴力による抑圧にすぎません。軍事介入は、真の平和をもたらすものではなく、次の新しい紛争の種をもたらすことになります。

悲惨な殺戮の続くイラクの実態が軍事的な「国際貢献」の現実なのではないでしょうか。

国際貢献では、紛争の根本原因をなくしていくような活動にこそ力を注ぐ必要があります。戦争・武力紛争といった物理的・直接的暴力の根絶はもちろんですが、紛争の根本原因となっている飢餓・貧困・差別・抑圧・搾取・生態系破壊などの「構造的暴力」(紛争発生の構造的要因)をなくすことがもっとも求められています。

平和憲法を持つ日本だからこそ、これらの国際貢献に積極的に協力していけるのです。

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